那覇の公設市場で夜光貝を購入してみました。
中身を刺身で食べ、貝はコレクションに加えるつもり。おお、一石二鳥ではないか!
…そんな甘い考えを持ったのも、旅行によるハイテンションな頭ならでは。
ブツは沖縄から帰った翌日に無事届きました。
で…梱包を開けてすぐさまよぎったのは、後悔の念。
これを、この中身を、引きずり出して、さばかなきゃいけないのか…!
私の手と比べていただければわかるかと思いますが、結構でかいです。しかもナマのまま中身を引きずり出さなきゃいけないなんて!
フタはがっちり閉まってビクともしません。
とりあえずバーベキュー用の金串をフタの隙間に差し込み、身にぐさりと刺しました。あとはてこの原理を利用して、中身を…出ない…引っ張り出す…出ない…貝の巻いている向きにそって…ああ出ねぇ…うがぁ!出ないよ!
そう、これが小ぶりのサザエならともかく、子供の頭ほどもあろうかという(そんなにはないか?)夜光貝には、金串なんて通用しないのだ! そりゃそうだよな、ヤツ(夜光貝)も必死だよ、食われるかどうかの瀬戸際だもんな、うんうん…って同情している場合ではない。このまま中身が出てくれないと、後は腐敗するだけではないか。この量が腐敗したら…相当におうぞ。
気を取り直して、今度はフタの隙間から直接手を突っ込んだ。うん、確実にこの方がやりやすい。ずぽーっという手ごたえとともに、手が貝の中に入っていく。ここで私の脳内では「逆子の赤ちゃん牛の出産を手伝う獣医」の気分である。手で赤ちゃん(貝の中身)の位置を探りながら、そうっと傷つけないように引っ張り…引っ張り…よし、足(貝の中身の外側に近い部分)が外に出た!もう少し引っ張るぞ!「野郎どもは湯を沸かせ!ありったけのタオルを持ってこい!」と牛の出産だか人間のお産だか混乱してくる。お母さん(貝殻)頑張って!もう少しだよ! ず…ず…という感触とともに、少しずつ少しずつ赤ちゃん(中身)は顔を出す。ひっひっふぅー、ひっひっふぅー、ほら、肩(どこだよ)が出てきた!ひっひっふぅー、ひっひっふぅー、もう一息、いきんで(自分)!
そして。
敷き藁(ステンレス製のボウル)の上に、ずるっ!どさっ!という音とともに、う、生まれた〜!赤ちゃん(夜光貝の中身)が出てきた〜!
私の心眼には確実に、赤ちゃん(くどいようですが夜光貝の中身です)からホカホカと湯気のたっているのが見えました。もう少ししたら立ち上がるのではないか、とすら思いました。4月6日午前11時30分、無事誕生。
で、これほどまでに努力して取り上げた赤ちゃん(もう一度言っておきますが、夜光貝の中身です)ですが、黒い部分は食べないらしいので取り外し、あとはスライスして刺身で食べたんですけど…硬い。かたい。アゴ痛い。私のさばき方が分厚すぎたのか、はたまた食べる部位を間違っていたのか、とにかく硬い。味は貝らしくさっぱりしていて良かったのですが…
結構高い代金と送料を払って送ってもらって、その結果がこれ…か?
しかも気が付けば、手の甲や指が切り傷だらけ。貝殻で切ったらしいよ。
結論。
素人は、公設市場2Fの食堂で、ちゃんとさばいてもらった夜光貝を食べるがよろし。
(貝殻はお願いすれば持ち帰れます)
でないと「逆子の赤ちゃん牛の出産を手伝う獣医」気分を味わう羽目になりますよ…。